小豆島で生そうめんに衝撃を受けたため、知らない和の麺を食べてみよう!ということで次に播州播磨を訪ねてみました。
そう、播州といえば「手延べそうめん 揖保乃糸」。
といいたいところですが、ここで訪ねたのは「もちむぎ麺」です。
このもち麦というのは、もち米のようにもち性のあるもち種の大麦のことです。
一般的にめん類は小麦(あるいは蕎麦)から作られますが、もちむぎ麺は大麦で作られているのです。
兵庫・福崎にある食と遊のふれあい特産館「もちむぎのやかた」さんでは、このもち麦を使った麺をいただくことができるレストランと、麺を購入できる売店コーナー、さらには製造工程について知ることができる展示コーナーがあります。
そしてもち麦を使った麺として、半生麺と、乾麺、手延素麺が販売されているのです(もち麦ラーメンもあったと思います)。
というわけで麺を味わってみたいと思い、冷たい麺のメニューからいただいたのがこちら「五種麺」。
トッピングは、とろろ、海苔、イクラ、山菜、小エビ天。
灰色がかかった麺の色と仕立てが相まって、見た目はお蕎麦のような印象です。
いただいてみますと、口あたりはつるりと滑らかです。
そして頬張ってみると、もちっとした食感が感じられ、麦の風味がしっかりと感じられます。
麺が美味しいですねぇ。驚きを感じます。
そして興味が沸いてきます。
一般的なめん類では原材料に小麦粉を用いますが(あるいはそば粉)、大麦を使うことは、何が違うことを意味するのでしょうか?
まずもち種であることからデンプンの主体が異なるようです。
- 小麦のデンプンはおよそ25%がアミロースで、およそ75%がアミロペクチン (*1)
- もち麦(もち種)のデンプンはほとんどがアミロペクチン
- アミロースが少なくアミロペクチンが多いと、粘性が感じられる。
また次のようにタンパク質の主体が異なるそうです。
- 小麦粉ではタンパク質8%~15%程度の含有で、グリアジンやグルテニンが主体。(*2)
- 大麦粉ではタンパク質が8%程度の含有で、ホルデインが主体。(*3)
グリアジンとグルテニンが水と共に圧力を受けると、両者が絡み合ってグルテンと呼ばれるものになります。
グリアジンには弾性、グルテニンの粘性があって、グルテンにはその両方の性質(粘弾性とも言われる)があります。
まとめるとつまりは次のようなことが推測されます。
- 小麦粉で作るうどんや素麺では主にタンパク質に含まれるグルテンの粘弾性を食感として食べる
- もち麦から作るもちむぎ麺では主にデンプンによる糊の粘着を食感として食べる
自信なさそうに書いているのは3つ理由があります。
- ホルデインの性質を調べてみてもよくわからないということ。
- もちむぎ麺は小麦粉を配合しており、比率が不明なことから主たる要素の取り違えがあるかもしれないということ。
- 例えば小麦にもアミロースが少ない”低アミロース”と分類される品種があり、もち種としての粘性のある品種も存在しているため、一概には言えないことから”主に”と注釈付きになるということ。
製造元の方にお話を伺えると面白いのかなと思います。
ところで、「もちむぎのやかた」さんが公開されている、もち麦麺の製造工程を見ますと、素麺と同じ製法のようです。
もちむぎ粉と小麦粉、塩水を混錬。
続けて圧延し、生地を切り出して食用油を塗ってロールにして熟成。
そして麺棒にかけて熟成させつつ、段階的に麺を引き伸ばしています。
最後に乾燥させ、長くなった麺を一定の長さに切り出して束ねて乾麺として出荷。
珍しいもちむぎ麺をいただくことができるとともに、素麺についても知ることができる「もちむぎのやかた」さん。
ありがたい思いで食べ歩きを終えることができました!
お出口リンク
参考文献:
*1 「澱粉科学ハンドブック」(二國二郎監修);「でん粉製品の知識」(高橋禮治著)等 (確認中)
*2 製粉振興会「小麦・小麦粉に係る基礎知識」
*3 大麦・分析機関:日本食品センター 大麦品種:もっちりぼしの場合。 (確認中)